腎がんについて

腎臓とは

 腎臓はちょうど腰のあたり、上腹部背側(後腹膜腔)に位置する臓器で、左右に一つずつあります。長さ10cm、幅5cmほどの大きさをした臓器です。血液から老廃物・水分をろ過して尿を作っています。また、血圧を制御するホルモンや赤血球を作るホルモンを分泌するといった働きもあります。
 腎臓に発生する悪性腫瘍には、腎がん(腎細胞がん)以外に、腎盂がんや、稀なものとして、肉腫や他臓器のがんの転移、小児期のウィルムス腫瘍もあります。
 腎血管筋脂肪腫は、腎臓に発生する良性腫瘍(がんではない)ですが、ときにがんとの区別がつきにくいことがあります。
 以降、腎がん(腎細胞がん)について説明します。

原因

 いくつかのがん遺伝子・がん抑制遺伝子が関与していると考えられていますが、はっきりした原因はわかっていません。肥満、高血圧、喫煙が危険因子と言われています。
 遺伝性疾患であるフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病の方や、腎不全で血液透析を受けている方では高率に腎がんが発生すると言われています。

症状

 血尿、痛み、腹部のしこりが主要な症状ですが、他にも貧血や発熱、倦怠感、体重減少など様々な症状がみられます。ただ、最近では健康診断やほかの病気の検査中に超音波検査やCT検査で偶然腎がんが発見されることが多くなり、無症状のうちに見つかる例が大半を占めています。

診断

 超音波検査は簡便な検査で、腎がんのスクリーニングによく用いられています。
 造影CT検査は、他の病変との区別をつけるために、また腎がんの進行度を診断するために非常に重要な検査です。
 MRI検査は、造影CTがアレルギーなどのためにできない場合や、CTではっきりとした診断がつかない場合に行うことがあります。


CTで診断された腎がん

治療

 治療の主体は外科手術です。転移のない腎がんであれば、外科手術によって根治が期待できます。
 片側の腎臓をまるごと摘除する方法(根治的腎摘除術)が一般的です。腹腔鏡による腎摘除術も可能で、より小さな傷で、体に対する負担を軽減することができます。当院では、根治的腎摘除術においては積極的に腹腔鏡下手術をおこなっています。
 近年小さな腎がんが多く発見されるようになったこともあり、腫瘍とともに腎臓の一部のみを切除し、残りを温存する手術(腎部分切除術)が普及しています。腎臓が大部分残るので、術後の腎機能の低下を最小限に抑えることができます。最近では手術支援ロボット「ダビンチ」を用いた手術もおこなっています(ロボット手術の項目もご参照ください)。

 転移のある腎がんに対する治療は、抗がん剤による薬物療法が中心です。腎がんで用いられる抗がん剤は、「分子標的薬」と呼ばれる、がん細胞が持っている特定のターゲット(遺伝子やタンパク質)だけに作用する薬です。現在はスニチニブ、パゾパニブ、アキシチニブ、エベロリムス、テムシロリムスなど、複数の分子標的薬が使用可能です。効果は大きいですが、副作用の管理に注意が必要です。
 また、免疫療法も有効です。インターフェロン注射は従来からおこなわれている治療法です。最近、各種のがんで「免疫チェックポイント阻害剤」の有効性が示されています。腎がんでもニボルマブという免疫チェックポイント阻害剤が2016年に適応承認されました。当院でも適応のある患者さんには積極的に使用し、効果をあげています。
 また、転移の数が少なく切除可能であれば、外科手術をすることもあります。